キルトが軽い理由と、その代償
キルトは、シュラフから背面の中綿とジッパーとフードを取り去った寝具です。 仰向けで寝ると、体の下になったダウンは体重で潰れて空気を含めなくなり、断熱材として ほとんど働きません。それなら最初から無くしてしまおう、という発想の道具です。
収録データで、同じ下限温度の帯にあるシュラフとキルトの中央値を並べると、その差が見えます。
| 温度帯 | シュラフ | キルト | 差 |
|---|---|---|---|
| 下限 −30〜0℃(残雪期・晩秋) | 1.02kg299件 | 610g71件 | −415g−40% |
| 下限 0〜6℃(春〜秋の高山) | 685g61件 | 436g16件 | −249g−36% |
| 下限 6〜15℃(夏・低山) | 573g25件 | 368.5g10件 | −204.5g−36% |
代償は明確です。背中の断熱がゼロになるので、地面からの冷えはマットだけで防ぐことになります。シュラフなら潰れたダウンでもわずかには効きますが、キルトにはその保険がありません。 さらに、体とキルトのあいだに隙間ができると冷気が入ります(ドラフト)。多くの製品は ストラップでマットに固定する仕組みを持っていますが、寝相によっては慣れが要ります。
マットのR値は妥協できない
R値は地面への熱の逃げにくさを表す数値で、大きいほど暖かい。主要ブランドはASTM F3340 という共通規格で測定しており、当サイトが収録する数値の中でも 珍しくブランドをまたいでそのまま比較できる指標です。収録マット230件のうち205件がR値を公表しています。
| R値 | 主な用途 | 件数 | 重量の中央値 |
|---|---|---|---|
| R1.0〜2.5 | 夏・低山 | 51 | 410g |
| R2.5〜4.5 | 3シーズン | 68 | 664g |
| R4.5以上 | 積雪期 | 75 | 705g |
R値は重ねると足し算になります。薄いフォームマット(R2前後)の上に エアマット(R3前後)を敷けば、合計はおおよそR5相当です。この組み方には副次的な利点もあって、 エアマットがパンクしてもフォームが残るので夜を越せます。 軽さだけを見れば1枚のほうが有利ですが、単独行や携帯圏外では保険として選ばれます。
3点の決め方
順番を決めておくと迷いません。
- 行く季節と山域から必要な温度を決める。日本の3シーズンの高山なら 0℃前後を下回る夜がある、という前提から入ります。
- マットのR値を先に決める。ここを削ると、寝袋を暖かくしても寒いままです。 3シーズンならR3以上が目安で、キルトを使うならさらに余裕を見ます。
- そのうえでキルトかシュラフかを選ぶ。マットが十分ならキルトの軽さが そのまま効きます。マットを軽いものにしたいなら、背面に中綿のあるシュラフのほうが安全です。
この3点で選ぶ
収録データから探すなら、シュラフ・キルト一覧とスリーピングマット一覧で、温度・R値・重量を並べ替えられます。 就寝装備は削減余地の大きい部分でもあるので、何から軽くするかも合わせて確認してください。